こんにちは。株式会社plan-Aの相澤です。
前職のディベロッパーにおいて開発事業を中心にまちづくりプロジェクトに多数携わり、現在も横浜など複数の地域でまちづくり活動を推進しています。それらの経験を基に、まちづくりについて第三者の視点でコラムを書かせていただきます。
「住宅地開発」というまちづくり
前回のコラムでは「駅前」という切り口での「まちづくり」を取り上げました。今回は「住宅地開発」という「まちづくり」の形について書いていければと思います。
従来の住宅地開発は、ディベロッパーが資金を投じて“自社の建物を売るためのまちづくり”を進めるのが一般的でした。しかし、このモデルでは分譲完了後に企業が撤退し、地域の持続可能性は住民任せになりがちです。皆さんの地域でも、そのような住宅地開発を目にしたことがあるのではないでしょうか。
開発規模にもよりますが、大規模に開発された住宅地には「まちの管理」が必要になってきます。そのまちの管理は、まだまだ多くの住宅地開発において管理機能不在なところがあるのが現状ですが、仮に管理機能が存在していたとしてもディベロッパーの都合で「必要最低限の機能」しか無い、というものがほとんどと言わざるをえません。
住むまちを選ぶ基準のひとつとしての「まちの管理」
大規模開発された住宅地に住まう人たちにとって「なぜそこに住むのか」という理由はとても大切です。住宅そのものの性能や機能も大切ですが、そのまちにおける「居心地の良さ」というものが大事な要素であると考えます。
居心地の良さには住宅単体だけでなく、大規模ならではの「街並み」や「整備された公園」「共用スペース」等様々な構成要素がありますが、それら全てに共通するのが「まちとしての管理が必要である」ということです。つまり、大規模な住宅地開発により「まちづくり」は「まちの管理」と密接な関係にあると言っても過言ではありません。
しかし、設備の維持管理だけを行うことが「まちの管理」ではありません。
設備やまちの景観を維持することに加え、暮らしを豊かにするサービスを提供することまでして初めて「まちの資産」になり得ていると考えます。
「そんな管理を提供しているまちなんてあるの?」
と思いますよね。あるんです。数は少ないですが、あります。
そのひとつが【Up DATE Cityふくしまソラチエ】です。

Up DATE Cityふくしまソラチエ
Up DATE Cityふくしまソラチエは、福島県伊達市に位置するパナソニック ホームズ株式会社が中心となって手がけた住宅地開発を通したまちづくりプロジェクトです。
パナソニックホームズは、『企業は社会の公器』という理念を背景に、地方創生と持続可能なまちづくりを両立させる“地方創生プラットフォーム事業”を開始しました。Up DATE Cityふくしまソラチエは、その代表事例です。
人口減少を中心とした「社会課題解決」の打ち手のひとつとして住宅地開発という方法論があると思いますが、その開発された住宅地が「持続可能」でなければ解決どころか悪化を招きかねません。つまり住宅地開発と持続可能性は両輪でなければならない関係である、ということです。ではその「持続可能性」をUp DATE Cityふくしまソラチエではどのように担保したのでしょうか。
一般的に住宅地開発は、開発者であるディベロッパーは住宅の分譲を完了すると撤退し、持続可能な状況になるか否かは住まう人たち次第になってしまう事例がほとんどです。
ディベロッパーが分譲完了後も継続的にそのまちに関わり続けるには理由と収益が必要になります。そこに関心が高いディベロッパーはほぼ皆無といっても過言ではないと思います。しかし、Up DATE Cityふくしまソラチエでは、そもそもの開発スキームから大きく業界慣例を覆してきた、と言えると思います。
新たな開発スキームとは
まずUp DATE Cityふくしまソラチエでは、パナソニック ホームズ株式会社が単独自社で土地と建物を分譲するという仕組みから変えました。自社で住宅を建てるのではなく、スマートシティ用地として付加価値を加えた宅地を整備し、地元工務店が住宅を建てる。このモデルは、地域経済への還元と持続可能なまちづくりを両立させる非常に優れた仕組みだと思います。さらに、自治体や地元企業と連携し、タウンマネジメント会社を設立することで、まちの管理とサービスを官民共創で実現している点も画期的です。これからの地方創生において、こうしたスキームは大きなヒントになると感じました。
また、連携したのは地元工務店だけではなく、自治体と連携したまちづくり協議会を設立し、官民共創でまちのサービスを検討。その後、地元企業や団体を中心に構成されるタウンマネジメント会社を設立し、まちの持続可能性を高める「まちの管理=タウンマネジメント」を創造していったという、前代未聞の取り組みと言えます。
この地方創生プラットフォーム事業そのものが、官民連携の取り組みといえ、その仕組みを構築したことがこのプロジェクト最大の成果であると思います。
地域に無理をさせないバランス
実際に現地を歩いてみると、無理なく自然な空気感を感じることができます。
阿武隈急行線高子駅を降りると目の前にUp DATE Cityふくしまソラチエがあります。
まちの入り口には交流施設があり、この建物はどなたでも利用が可能。建物内にはレストランも存在し、食を通じてコミュニケーションを深めるきっかけづくりにも寄与していると感じます。訪問した日も平日にもかかわらず、常に利用客で賑わう光景は、地域でも愛されていることが推察されます。




まちの中では、その街並み形成においても「無理をさせない」配慮を感じます。


一般的には大規模住宅地開発にあって、その規模感ならではのアドバンテージを活かすために「街並み」をどう整えるかは大きなポイントとなり、植栽含めた外構計画が重要になってきます。統一された美しい街並みはたしかにまちの、地域の価値を高めます。けれども地域の特性や開発のスキームによっては難しい場面も出てきます。
Up DATE Cityふくしまソラチエではそのルールを厳格化せず、けれども街並みの統一感を演出することにも成功していてバランスがとれていると感じました。
人口減少フェーズにある日本で、ただ住宅を建てて売るだけでは地域は持続しません。官民連携、地元主体、企業の社会的責任を組み合わせたこのモデルこそ、地方のまちづくりの新しい形だと思います。

プロフィール
相澤 毅(あいざわ つよし)
株式会社plan-A代表取締役、合同会社plan-A TOYAMA代表社員。Project Designer、Innovation Booster。大手生活ブランド勤務を経てから前職ではデベロッパーにて社長室に所属し不動産開発から海外事業におけるスキーム構築・広報PR・販売戦略・広告クリエイティブ・ブランディング・新規事業企画・商品開発・人材育成制度構築・産学連携など手がけてきたが、2018年5月に独立起業。今は不動産事業者や大手家電メーカーのコンサル、企業の事業開発参画、不動産開発事業、場のプロデュース、拠点運営、自治体とのまちづくりや創業支援、企業の取締役や顧問、NPO法人の理事等を手がけ、多様な働き方を実践している。